不惑(四〇)世代を乗り切るためには

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不惑世代というとアラフォーといったところでしょうか。
40歳はまだ体力も気力もありますが、その先の50代が少し見えるかける時期です。
平均年齢からすると中間といえる時期。ここをどう乗り切るかで人生が違ってきます。

孔子が「四十にして惑わず」と記したことから不惑とは40歳という年齢をさす言葉になりました。40歳まで生きると、物事が見切れくるので惑わず選び生きていける。そんな意味です。

ちなみに30歳は「而立(じりつ)」、50歳は「知命(ちめい)」となります。

ただ、違う意味で不惑な人が多いのが日本。

惑う=迷うです。どういうことかというと
はじめから「迷うことをしない」という不惑です。

物事に迷わないなんて良いことでは…と思われますが、孔子の「不惑」とは意味合いが違うのです。

It’s automatic ! イッツ オートマチック

日本はオートマチックの国です。
というのも、日本人は選ぶことが苦手な民族といわれます。

さかんに行動をルーティン化(習慣化)したり、モノや情報をパッケージ化したり、オートマチックにして選ばなくてもすむよう社会自体が工夫をこらします。

セットメニュー、オールインワン、〇〇パックなどなどいちいち迷わなくてすむ、選ばなくてすむ商品やサービスがあふれています。日本では選ぶ手間をはぶくことがサービスになります。

例えば、日本で当たり前のパック旅行は、欧米ではウケません。自分で選ぶ個人旅行がほとんどです。

ランキングも大好きですね。
ありとあらゆるランキングがあり、No1を選べば迷わなくて済みます。

自ら選ばなくてもいいのです。
まるで質問に対して回答が用意されているようなものです。

慣例重視もそうです。前からこうだったので、今回も同じで…

まさにIt’s automatic!
宇多田ヒカルさんの歌が懐かしいです。

型を重んじる日本の文化の影響も大きいでしょう。
俳句の季語も、着物の柄も型ですし、茶湯は型があってこそ茶湯として成り立ちます。

個が全体か、全体が個か

日本にいるなら、このオートマチックな状況は特段おかしなものではありませんし、別に悪いわけでもありません。

この状況をメタに言い当てた人がいます。
文化人類学者のレヴィ=ストロースはこう唱えました。

個々人は主体的に思考し行動するのではなく共同体の秩序という無意識下にある「構造」に従って行動する。

主体(私)は構造に規定される

私たちの思考や行動がこの社会をつくっていると思っています。でも、そうではなく構造という大きな枠があって、その中で思考や行動がつくられる。
日本だとオートマチックな社会に無意識に従っている「私」がいるわけです。

でも、構造を変えることはできません。
私たちが構造の中にいて、その構造を知るのも大変なわけです。ほんの爪先が見えた程度でしょうか。

問題が起きた時に現れる

不惑の話にもどしましょう。
結局、私たち日本人は自ら迷って選ぶことをしないという「不惑」になっています。
いわばオートマチックな「不惑」です。

孔子のいう「不惑」は迷わず自ら選ぶことができるということ。

自ら選ぶか、選ばないかの違いですが、この差は大きいのです。

自分で選んでないのなら、責任は薄くなります。
周りが選んでいるから、以前からそれを選んでいたから、選ぶのが面倒だったから…

もちろん、自分で選ぶ、選ばないに良い悪いはありません。
オートマチックに迷わず、悩まず、考えずに選んだ物事が壁にぶつかった時に、違いが現れてきます。

自分で選ぼうと、選ばなくても選択には後悔はつきものです。
目の前に起こっていることに向き合っていけるか。

オートマチックな「不惑」が社会の土台としてある中でオートマチックに生きるのもありです。構造から考えたら素直な生き方とも言えます。

こういった背景をふまえ
不惑世代として40代をどう生きるか。
自分で選ぶ、選ばないを一度決めてみるのも、後半の人生に挑むため必要かもしれません。

挑むためには

自分で選びたいなら「多惑」になることをお勧めします。

孔子の「不惑」のように物事を見切れる状態にはそうなれません。
たくさん迷って、考えて、決めていきます。
オートマチックと逆。大変ですが。

自分が考え、決めた選択ならたとえ問題や後悔があったとしても向き合えます。
しかも誰のせいにもできないわけですから。

そして、孔子のいう50歳「知命」に進んでいけます。

考えて決めるために必要なのが思考です。ただ、思考には手助けがないと広がりません。
思考を広げてくれるのが哲学です。
古代から脈々と続く天才哲学者たちの思考を利用ない手はありません。

前述したレヴィ=ストロースは文化人類学者であり哲学者です。
彼の唱えた「構造主義」はこの世界への理解を大きく進めました。

もちろん、オートマチックの「不惑」で生きてもいいのです。
不惑世代として、オートマチックの「不惑」を選ぶと決めるだけでも違いはあります。